でもたまにふと透さんを思い出すことがあった。



もう退院したから先生って呼ばなくてもいいんだ・・・・。



だからたまに小さな声で呼んでみる。
「透さん・・・大好きでした・・・。」


私はあれから誰も愛すことができなくなってしまった。
もう裏切られるのが怖いということもあるが一番の理由は・・・・・
やっぱりあの別れ際の透さんの苦しそうな表情が忘れられなかった。



そして今もまだ透さんを愛していた。
忘れたはずなのに・・・いつも浮かんでくるのは透さんしかいなかった。




私はいつしか、もし会ったらこんなことを話そう、とそんなことばかりを考えるようになっていた。
もう会えることのないことだって知ってる。
もう愛されないことも知ってる。


でも・・・・愛した証を残しておきたかったのかもしれない。
私の目は透さんのことを考えるとゆらゆら揺れる。
まるで水面に映った月のようで・・・あの時先生の瞳に映った私の顔を思い出す。



こんなにも好きだったなんて・・・ね。