「ライカはハンターには向いていない。故に、学ばせる気はなかったのだろう」

 中途半端に知れば返って危険となる。

 諦めて普通の生活をしてもらうためにもと考えての判断だったのだろう。

 それでも、ライカはセシエルの意志を継ごうとしている。

「私にそれを押しつけるとは」

 お前が弟子を取らなかったのは、とことん人に教える事が下手だったからか。

 仮にも育てた子供で愛情もあっただろうに、奴の運を試すとはお前らしい。

 愛情があればこそ、難しかった事も理解している。

「最後の最後まで私を楽しませてくれる」

 皮肉を込めて口角を吊り上げた。

 確かな絆があったのだと示すものは花束ではなく──おもむろに抜いたナイフは、白い大理石に高い音を立ててそれを刻んだ。

「そんな綺麗な墓は、お前には似合わない」

 それは、闘いの証──最期のそのときまで求め続けたもの。

 乾いた風を頬に受け、ベリルは墓地をあとにした。






END