「あなたのことは誰にも言わない」──感謝の言葉と共に彼女の口からつむがれた。

 ベリルの存在は表の世界には決して知られてはならない。

 ベリルの傭兵としての力を求め、彼の存在に救いを感じている者は組織や団体、国に至るまで様々だ。

 多少の犠牲を払ってでもベリルを守ろうとする力は大きい。

 口をつぐむことは、彼女自身の身を守ることにもなる。

 ──ライカは助手席でベリルの横顔を見つめた。

 見た目も性格もまったく違うのに、育ての親であるクリア・セシエルの姿とついつい重ねてしまい唇を噛む。

「ライカ」

「なんだ?」

「空港はどっちだ」

「え……」

 忘れた頃にやってきた質問に固まる。

 空やらあちこちを見回すが、どう見積もっても理解しようとして見回しているようには思えない。