「私の知人に優秀な医師がいる」

 彼の腕は確かだよ──ベリルの言葉に喉を詰まらせる。

 あんなことをした私を助けてくれるというの?

 自分がしたことを思えば、ベリルの言葉はとても信じられないものだった。

 それでも希望があるのなら、プライドなんか捨ててすがりつきたい。

「彼は、レンドルは目を覚ます?」

「それは解らない」

「もっと冷たい人だと思ったわ」

 彼女の言葉に口の端を吊り上げて病室をあとにした。

「あれでいいのか?」

 自分を捕まえようとした相手なのに助けるなんてとライカは驚いた。

「彼女なりの前に進む力だったのだろう」

 ベリルは病院の入り口をちらりと見やり、車に向かった。

 前が見えなくなることはよくある事だ。

 取り返しの付かない状況にならなかった事が幸運だろう。