結局、なんの説明もなく帰されたライカは車の中で依頼の件をどうしようかと思案していた。

「やっぱキャンセルするか」

 スマートフォンを見つめて唸る。

 キーパッドに触れる直前で止まり、外を眺めてキーパッドを見下ろすを何度か繰り返した。

「……明日でいいかな」

 誤魔化すように一人で苦笑いを浮かべポケットに仕舞う。

 ライカは、どんな理由をつけてキャンセルすればいいのか解らず先延ばしにした。

 そもそも、嘘を吐いてベリルを捕まえさせようとした相手が悪いんだと腹立たしげにハンドルを握る。

 それをそのまま話せば事足りるというのに、そこまでは頭が回らなかった。