「奴は最期に笑っていたのではないかね」

「なんでそれを!?」

 ベリルは驚くライカから視線を外し、宙を見つめた。

「奴の死はお前のせいではないよ。今しか出来ぬ事をしただけだ」

 若い頃のような闘い──あの駆け抜ける快感を最期にもう一度──それが、セシエルの最期の願いだったのだ。

 どこを見るでもないエメラルドの瞳は憂いを湛えているように揺らめいていた。

「あんた……。オヤジといつ会ったんだ?」

 あまりにも歳が離れている二人にライカは怪訝な表情を浮かべた。