「組織の名を教えてくれんかね」

 目を反らして黙り込む男を睨みつけるのでも、痛めつけるでもなく静かに問いかけた。

 男は無言で見つめるベリルを一瞥し、まるで感情の読み取れない瞳に少し体を強ばらせて目を泳がせる。

「突き止められないとは思わない事だ」

 ゆっくりと手錠を外して立ち上がる。

「逃がすのかよ」

 思ってもいない行動にライカは思わず声に出した。

「痛めつけるのは苦手でね」

 男は時折ベリルの方を振り返り、ふらつきながらセダンに乗り込み逃げるように走り去った。

「奴が教えてくれる」

 車の影をさらりと手で示す。

「どういうことだよ?」

 それには答えず、端末を取り出してどこかにかけ始めた。