ベリルは男の両手を後ろ手に手錠をはめてしゃがませ、無表情に視線を落とした。

 何かを思案しているのだろうか、しばらく男を見つめている。

「金はなさそうだな」

「は?」

 ぼそりと聞こえた言葉に、ライカは聞き間違いだろうと自分に言い聞かせた。

 こんな時に相手の資産など計るはずがない。

 ましてや、手持ちをどうこうしようだなんて考えている訳がない、きっと俺の聞き間違いだ。

 そんなライカの戸惑いなど素知らぬ顔をして、ベリルは男と同じ目の高さになるように片膝を突く。