「研究するつもりか売り飛ばすつもりなのか」

 訊いてみるかな──そんなベリルのつぶやきが耳に届いた刹那、素早く駆けていく背中を視界に捉えた。

 まるで獲物を狩る獣のように音もなく標的を目指す。

 ふと見れば、その足元は動きやすいスニーカータイプの靴だった。

「は、早え……」

 二十メートルはあったはずの距離は一気に縮まり、その足の速さに思わずつぶやく。

「──なっ!?」

 男は低い体勢で駆けてくるベリルに驚き、思わずハンドガンを手にした。

「遅い」

 軌道を読んだのか、わずか五メートルという距離にもかかわらず男が放った銃弾は虚しくコンクリートの地面に当って鈍い音を立てた。

 銃口を向けているというのにまったく怯む事のないベリルに、むしろ男の引鉄を引く手が強ばる。