『信じなくても良いわよ!

でもねぇ、忘れないでよね!

りゅう君にとってわたしは初めての女性で、特別な存在だって事をね。』



「しつこいですね。

早く出てって下さい。

コピー取らなきゃいけないんですから、これ以上邪魔するんだったら、高山社長に言って、配置変えさせてもらいますから。」



『あらそう!?

貴女が居なくなるんだったら、まさに好都合だわ。

さっさと配置変えしなさいよ。

わたしはりゅう君と楽しくお仕事させていただくから。』



「もう、メッチャクチャ腹立つ女ねぇ!

高校生だと思って舐めてるわね、

配置変えするのはおたくですから!

あんたみたいな人とは、一緒に仕事したくありませんので!

出ていかないんだったら、私がここから出ますから、後コピー宜しく、オバサン!」



『オッ…… オバサン!?

チョッと待ちなさいよ!

だれがオバサンよ?

いい加減にしなさい。』



私がドアを開けてコピー室から出ていく後ろから、棚橋さんのヒステリックな声が背中から聴こえてきたが、これ以上相手にしたくなかったので無視して出ていった。



その頃俺は、学校内では生徒会と共に忙しく文化祭の準備に追われついた。



「小坂会長、この武蔵野工芸展って文化祭って言うより、展示即売会の要素が強いですが、どうして精密機械科と建築科と工業化学科は何も作らないんですか?」



『その3科は、売れるもん作れないからな!

だから、その代わりに模擬店を担当して貰ってるんだよ。』



「そうですか。

そろそろ生徒会も辞められるんですよね!

次期生徒会長候補って出てるんですか?」



『あぁ、2年デザイン科1組の富山くんが立候補してるのと、学年主任推薦の2年電気科2組の前田くんの二人だけだけどな!』



「そうですか。

でも、生徒会の仕事って大変な雑用が多いのに、良く立候補しますね。」



『そりゃ内申書を良くしたい奴とか、学校を愛してる奴か、威張りたい奴がなるんだろう。

俺の場合は、まぁ内申書の評価を良くしたいからだけどね!』



「何か、大変ですね。

小坂会長は、進学クラスですから大学には行かれるんでしょ!?

どこの大学を受験されるんですか?」



『俺は、W大学を受験する予定だよ。

受かる受からないは別として、取り敢えず頑張って挑戦してみるつもりなんだ。』



「そうですか。

頑張って下さい。

小坂会長は彼女いるんですか?」



『何を言ってんだい!?

知らないのか?』



「何がですか!?」



『生徒副会長の藤川は、俺の幼馴染みであり、俺の彼女なんだぜ。』



「え~ッ!?

あの人が彼女さんなんですか!

知りませんでした。

とっても素敵な人ですよね。

2年生の男子の中にも、藤川センパイのファンが沢山いるんですよ。」



『そうらしいな!

2年生の会計の本多から聴いたよ。』



「会長、取り敢えずこちらの書類は作成しましたので、コピーして配布するだけになりました。」



「もう出来たのか?

随分と手際が良いな。

桧山君、生徒会に入らないか!?」



『バイトが忙しいので遠慮しておきます。

それでは、今日はこれで失礼します。

それでは、また明日きます。

お疲れさまでした。』



「あぁ、お疲れさま。

生徒会役員になる件、考えといてな。」



その言葉には答えず、深々と一礼して生徒会室を後にした。