途中、信号に引っ掛かった時に美華に電話を入れてみたが応答がない。



こりゃ相当怒ってるぞ!



ここは、本当の事を話して余計に機嫌を損ねるよりも、寝坊しててゴメンね作戦でいくしか無いな。



別に悪い事をした訳じゃ無いが、ちょっと後ろめたいのは何故だろう……。



兎に角、信号が変わったのでアクセル全開で首都高速3号渋谷線の渋谷ICへ向かった。



高速に乗ったら違反ギリギリまで速度を出して、用賀で降りると、環八通りを北へ上り、世田谷通りを西へ左折したら、都道428号線との五叉路を右折して北へ行くと直ぐに美華の家だ。



インターフォンを押すと、お手伝いさんが、



『はい、どちら様でございましょうか?』



と聞いてきた。



俺は、



「美華さんと同じ高校に通う、桧山と申します。

美華さん
御在宅でしょうか?」



と、丁寧に返答した。



すると、



『済みません。

お嬢様は、お出掛けになられておりまして、いらっしゃらないのですが……。』



そりゃ、全く連絡もしないで約束の時間を50分も過ぎてりゃ、逢いたくもないわな。



「分かりました。お邪魔しました。

美華さんが帰られましたら、桧山が来ていたとお伝えください。」



そして、バイクがエンジンをかけて、滝本家から少し離れた場所まで移動して、美華の部屋の窓をソ~ゥとみてみた。



案の定、カーテンの端が揺れて、美華が外の様子を伺っている。



そこで俺は、もう一度美華に電話してみた。



テゥルルルル……テゥルルルル……



ヤッパリ電話には出てくれない。



「ゴメン。

りゅうだけど、寝坊して遅れちゃった。

怒ってるよね!?

折角久しぶりのデートなのにね。

俺も久しぶりのデートが嬉しくて、興奮しすぎて昨晩なかなか寝付けなかったんだ。

今日は、もう帰るね。美華が……」『もしもし? りゅう……』



「美華、本当に遅れてゴメン。」



『今何処に居るの?』



「美華ん部屋の窓が見えるくらいのところ。」



『5分したら外に出るからうちの前にバイク着けて!』



電話を切って5分後、ライトブルーのストーンウォシュのジーンズに、ライトピンクのプリントTシャツ、皮の小さめのショルダーを手に現れた。



『遅~い!!!』



「マジでゴメン。」



『何度電話をしても繋がらないし、約束の時間を破るような人じゃ無いし、もしかしたら途中で事故にでもとか、変なこと想像してしまうし…………』



「本当に心配かけてゴメン。」



『今日は、りゅうのオールおごりだかんね!

私に心配をかけた罰よ!』



「最初からそのつもりだよ。

とっても良い処に連れて行ってあげるから。

このメットかぶって。

出来るだけ安全運転で走るからね。

でも、兎に角確りと腰に手を廻して掴まってて。」



『分かったわ。

何処に連れて行ってくれるか楽しみだわ。

早く行こう!』



さっきまで怒っていたかと思えば、急に泣きそうな顔になって、まだ数分しか経ってないが、もうニコニコしている。



本当に色んな表情を見せてくれる。



感情表現が素直なんだろうなぁ~。



「それじゃあ出発するからな。」



と言って、彼女の両手を俺の腹の前で確りと組ませて、自分もメットを被ると、セルモーターのボタンを押してエンジンをスタートさせた。