工芸科校舎から、渡り廊下を通り、工業科の校舎に戻って、機械科の教室に到着したと同時に、5時限目のチャイムがなった。
俺の嫌いな機械設計の授業だ!
6時限目は、機械工作だし、満腹で午後からの授業には辛すぎる。
眠たくなる、2つの授業をようやく終えた俺は、いつもの行きつけの喫茶店へ向かった。
喫茶 《ROCKER》
ここのマスターは音楽好きで、店内には海外の有名なバンドの曲が、いつも流れている。
若い頃は、バンドのドラマーをしていたんだって言ってた。
だから、店内の一番奥にはドラムセットが組まれてある。
なかなか渋いオブジェだと思っていたけど、実際にはきちんとメンテナンスがされていて、いつでも叩けるそうだ。
俺は、ホットコーヒーを飲みながら、店内に流れるレッチリの曲を聴いていた。
~♪~♪~♪~♪~
ゴールデンウィークも過ぎて、今は中間試験の真っ最中。
とにかく、試験の数が多すぎる。
現国や地理、化学や数学などの教科の他に、機械工作、機械設計、原動機や熱機関、機械製図など、全部で15教科もある。
月曜日から金曜日迄、毎日3教科ずつみっちり1週間テスト漬けだ!
俺の得意な古典や英語、数学なんかは問題ないが、物理や歴史は最悪だろうな。
1週間続いた中間テストも終わり、来週からは文化祭に向けての作品作りが始まるんだ。
俺達の学校は、各科の特色を出して、生徒達が各々作品を作り、それを文化祭で販売するのだ!
例えば、漆芸科なら御盆や硯箱、インテリア科なら本立てやマガジンラック、金工科はブローチ等だ。
俺達機械科の作品は、ブンチンやフラワースタンド、小型の万力等だ。
鋳造でブンチンを作るのだが、この時あの事故が起きて仕舞った!
俺達の高校の鋳造小屋には、風式キュポラとバーナー溶解式とがある。
溶解速度が早く、電力原単位の優れた高周波誘導電気炉の設置が増加している現在、俺達の高校はかなりの旧式である。
そんな旧式のやり方を学んでいた時である。
地金をバーナー溶解している時に、入れる地金の量が少し足らないと感じた教師が、既に地金が溶解している中に、地金を追加で投入したのだ。
3000℃あるるつぼの中に、冷たい地金を入れたら、どうなるか知っている教師がである。



