『しかし、所詮高校生の浅知恵だな!』


と言ったのは、店長の金本さんだった。


「どうして、そう思われるのですか!?」


『だってそうじゃないか!

歌手に成りたくてカラオケボックスに通ってくれる人が、東京に何人いるんだい。

たかがしれてるぞ!

それに、別に歌手に成りたくないけど出場して大会を台無しにしてしまう、大会荒らしみたいなのが出てきたらどうするつもりだ!?』


「本当に歌手に成りたいって言う人は少ないんでしょうか!?

俺の知る限りでは、中学生の女の子の半数以上は歌手を夢見ていると思いますよ!

私の居た中学校のアンケートで、将来成りたい職業の第2候補に歌手って書いてた女子中学生は、全女子生徒の半数以上でしたから、他校でも、多分同じ結果が出ると思いますよ。

ただ、現実味が無いとかチャンスが無いとかで、その結果が第2候補と言う形で現れているんだと思いましたよ!

今時の女子中学生や女子高生は、下手なサラリーマンよりたくさんおこずかいを持っていますしね!

大会荒らし!?

大いに結構じゃないですか!

大会荒らしが出ると言う事は、それだけ知名度が上がっていってるバロメータみたいなもんじゃないですか!

大会荒らしが優勝して、でもその優勝した荒らしの子は本当に歌手に成りたくないんでしょうか!?

歌が好きだから、色んな大会に参加するし、言い換えればそう言う人は歌が上手いから予選を通過して参加してくるんですから、もし本当に歌手に成れるとしたら、その荒らしの人は真剣に向き合って来るんじゃないですか!?

また、今回は駄目だったとしても、次の機会が有ると分かればより一層練習もしてくるはずだし、常連さんに成ってくれるんじゃないですか!?

そして本当にチャンスを掴んだら、新星MUSICとしても売り出す時に売り出し易いじゃないですか!

幾度もの大会に落ちたが、最後まで諦めなかったから、最後にはチャンスをものにして歌手に成った○○さん!ってな感じで。

そういった頑張って苦労して夢を手に入れた人は、どんな苦労にもめげにくいですしね!

大会荒らしって言われる人は、そんな人が多いんですよ!

本当は歌手に成る夢を諦めない人達なんです。」


『………』