『まずは、O-Suong電子の経理課長で、ギャンブル好きの盧氏(ノさん)には、全社員の給料を社員の口座に入れずに、給料分の金額をユニセフに寄付という形で送金して貰ったよ。』



「全社員の給料っていったら、相当な額ですよね。」



『そりゃ、数億円もしくは数十億円だろうなぁ。』



「企業として成り立たす為には、同じだけのお金をかき集めて、きちんと社員に給料を支払わないといけないし、大変だったでしょうね。」



『私がされたら、涙が止まらないくらいショックだよ。』



「それを遣っちゃいましたかぁ。」



『私が遣ったんじゃないさ。

ギャンブルに嵌まって、会社のお金を横領していた犯人が遣ったことだから。』



「それでも、社長の名前が出るんじゃないですか?」



『私が、そんなヘマをすると思うかい!?

私は、一切おもてに顔を出してないさ!

代わりに動いたのは、O-Suong電子って言うか、五星(オソン)グループと対立していて、ホテルやカジノを経営して通信機器も扱っているライバル関係にあるKSグループの誰かだよ。』



「社長は、そうなるように情報を第三者を使ってKSグループに流し、ついでに入れ知恵をしたんですね。」



『凄いなぁ!

何で分かった!?』



「このパターン、なんかの韓流ドラマで観ましたよ。」



『ハハハ、バレたかぁ。

私も、まさかあのドラマと同じ様に巧くいくとは思わなかったよ。

おかげで、五星(オソン)グループの宋(ソン)会長は、あの土地を手に入れるお金も直ぐには用意できない状態になり、その上警察からの取り調べもまだ終わらず、ただただユニセフから感謝状だけ頂き、実行犯はスイスで家族とのんびりと過ごしているって訳だよ。』



「それにしても社長、ちょっと無茶し過ぎですよ。」



『そうですよ。

もし、後から何か言われたらどうするんですか!?』



『大丈夫だ。

詳しくは教えられないが、私のところまで辿り着けない様に、色々と細工をしているから。

これを知っているのは、韓国サイドは私の協力者と副社長、日本サイドは李支社長と君達二人だけだから。』



「僕達に、話して大丈夫なんですか!?」



『あぁ、君達を信頼しているから、問題ない。

それとも、私を裏切って韓国警察に情報を流すかい!?』



「まさか!」



『そうですよ社長。』



『それにさ、まさか遠く離れた日本の地の、アルバイトの大学生が事件の真相を知っているなんて、誰も思わないさ!』



「そりゃまあ、そうですけど……」



『まぁ、そう言うこと。

それじゃあ、これから獨孤 美栄(トッコ・ミヨン)に会いに行こうか!?』



『社長もですか!?』



『あぁ、彼女が日本に来るのと入れ違いで韓国に行ってしまったから、取り敢えず顔を見とかないとな!』



「それじゃあ行きましょう。

この時間帯なら、新星アクターズスクールの生徒達と一緒に演技指導を受けてると思います。」



『そんなことまで遣ってるんだ!?』



「彼女の希望なんです。

日本人の感情表現を勉強したいって。」



『そうかそうか。

ちゃんと頑張ってるんだな。』



『社長、彼女は凄い頑張りやさんなんですよ。

ファッションだって、日本人に好印象が得られる物を勉強しているし、バラエティー番組でもちゃんと出来るように、受け答えの練習とかも日本語と平行してやってるんですから。』



『じゃあ、ベリナイ(ベリーベリーナイスと言うバラエティー番組)に出演しても安心だな。』



「まだまだこれからですよ社長。

日々、此れ勉強ですから。」



桧山君の顔が、一人前のタレントマネジャーの顔になってきつつあるのを、誇らしい気持ちで眺めていた高(コ)社長である。