「それはそうと、李支社長から伺ったんですが、韓国本社がマフィアの地上げに絡む嫌がらせで、大変な事になってるって本当ですか!?」



『あぁ、大変だったよ。』



『お怪我は無かったんですか!?』



『あぁ、私はな!

しかし、下請けのスタッフが数人、大怪我をさせられてなぁ。

それで、直ぐに向こうに戻ったんだよ。』



「もしかして、龍山区(ヨンサング)漢南洞(ハンナムドン)の土地狙いですか!?」



『流石、桧山君は鋭いなぁ。』



『そこって、何か在るの!?』



「ほら、前に社長達と韓国に行ったときに見せてもらった漢江(ハンガン)の向こうにある広い土地!」



『あぁ、コンサートホールを造る為に手に入れた学校の所ね。』



「そうそう、あそこを狙われたそうだよ。」



『そうなんだよ滝本ちゃん!

5万平米(5ha)もの土地だから、向こうの五星(オソン)グループっていう財閥がね、韓国のヤンウイ派って言うマフィアを使って工事の邪魔をして、あの土地を横取りしようとチョッカイをかけてきたんだよ。』



『どうして、財閥があの土地を欲しがったんですか!?

財閥なら、お金も沢山有って土地なんかも一杯持ってるんじゃないですか!?』



「そうですよねぇ。

どうしてなんですか!?」



『君達も、一度は聞いたことが有ると思うけど、韓国は山が沢山在るが、平坦な土地は少ないんだよ。』



「そうでしたね。

釜山なんかは、巨大なマンションや団地が山の至るところに建てられたりして、ソウル市内でも坂道だらけでした。」



『平坦な土地は、殆ど既に住宅地や商業地として使われているから、新たに広い土地を手に入れようと思ったら、山を1つ切り崩す位の手間は必要なんだよ。』



「そうですね。

まぁ、ちょっと田舎の方に行けば、どうにでもなるんだけどね。」



『私は、常々コンサートホールを経営してみたかったんで、ずっと何年も探し続けていたんだよ。

そして、漸く見つけたと思ったら、こんなことになってしまってね。

五星(オソン)グループも、同じだと思うよ。

向こうは、ホテル経営を遣りたかったみたいだが、財閥がショボいビジネスホテルを遣るわけにもいかないしね!

それこそ財閥が経営する企業ネームと同じ、5つ星クラスのホテルをぶっ建てたいみたいだよ。』



「どうして、そこでマフィアが絡んでくるんですか!?」



『五星(オソン)財閥の代わりに土地を手に入れるから、代わりにホテルの地下でカジノを経営させて欲しいと願い出たみたいだね!』



「カジノでしたか。

面倒くさいホテル経営は、五星(オソン)グループにまかせて、地下のカジノで荒稼ぎって事ですね。」



『カジノ経営って、そんなに儲かるもんなの!?』



「美華は、カジノなんかに行っちゃ駄目だからね。

でもね、たとえば極端に少なく見積もって、ホテルが1日平均百人宿泊していて、その3割がカジノに行くとするよ。

1人平均5万円遊んだとして、動くお金は150万円。

勝つのは、正味1割ちょっと!

後は皆負けているんだよ。

それを24時間やってるんだから、入れ代わりも考えて、宿泊客以外の来店も考えると、1日にだいたい500万円くらいで、低く見積もっても、月に1億5千万円。

年間だと、18億円。

諸経費、人件費諸々を差っ引いても、年間15億円が懐に入るって事だよ。

少なくともね!

換金率をもう少しあげれば、実入りは減るけど、次期に彼処のカジノでは良く勝てるとなれば、もっと客動員も増えて、あがりも増えるって計算なんだよ。」



『という事は、カジノで儲けるには、お客として行くんじゃ無くて、経営すれば良いんだね。』



「そう言うこと。」



『まぁ、桧山君が言ったように、ホテルのカジノには、旨味が一杯詰まっている訳なんだよ。

だから、もうマフィアがウジャウジャ遣ってきて工事の邪魔をする訳だよ。

痛い目にあいたく無かったら、工事を止めて、その土地を手放せってね!』



「酷いですね。

それで、解決したんですか!?」



『当たり前だろ!

俺がやられっぱなしで、黙って見てる訳ないだろう!』



「社長、目が怖いですよ。」



『それで、どうやって決着を着けたんですか!?』



『それはね……』



と言ってから、冷めかけたコーヒーをゴクッ!と1口で飲み干してから、不敵な笑みを浮かべて二人の方に目を向け話を続けた。