その後、暫くして愛ちゃんの御両親も交えて、食事をしながら楽しいひとときを過ごして、夜10時過ぎに俺達は帰路についた。
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それから俺達は、冬休みの間ずっと新星MUSICでのバイトに明け暮れ、少しずつタレントマネジメントのスキルもアップしていった。
そんなある日、俺と美華は社長に呼ばれた。
社長室に入り、高級感漂う黒い革張りのフカフカなソファーに美華と並んで座り、本社と打ち合わせをしている高(コ)社長の電話が終わるのを待っていた。
電話の内容は、詳しくは解らないが、本社サイドのタレントを日本でデビューさせるような内容の話をしているのだが、どうやら本社サイドが反対しているみたいだ!
漸く電話も終わり、受話器を置いた社長が、こちらに向きなおした。
『いやぁ、呼びつけたのに待たして済まないな!』
「いえ、大丈夫です社長。
それより、お話とは……。」
『おう、それそれ!
君達に大事な話が有るんだ。
桧山君は、先程の本社との打ち合わせの電話を聞いていたから、だいたいの予想はついてるだろう!?』
「はい社長。」
『桧山主任、さっきの電話の内容、あんなんで分かったの!?』
「大体はね!
社長、本社のタレントを日本でデビューさせるんでしょ!?」
『そうなんだよ。』
「でも、本社サイドは渋っていた様に感じたんですが……。」
『そこまで解ったのか。
そうなんだよ。
本社の営業部長の王(ワン)さんは、桧山君も滝本さんも覚えているだろう。』
「『はい。』」
『留学生の件で韓国に行った時は、色々とお世話になった方なんですもの。』
「それに、新星MUSIC初の女性の部長さんだって聞いてます。」
『あぁ、俺の高校時代の1つ後輩なんだが、仕事が出来るやつなんだ。』
「その王(ワン)部長は、なんで渋っているんですか!?」
『私が日本でデビューさせようと考えているのは、新人の女優なんだ。』
「女優さんですかぁ。」
『それも、まだ連ドラに脇役で出てただけのな!』
「なら、もう少し韓国サイドで頑張って行ったほうが宜しいんじゃないですか?」
『そうよねぇ……。
でも、何かしらのプランが有るから、日本でデビューさせようと思ってるんですよね。』
『プランがっていうか、彼女が日本でデビューしたがっているのと、彼女の雰囲気や見た目が日本人が好みそうな感じだから、こっちでデビューさせてみようかなぁ……、ってそんな感じかな。』
「社長、超適当ですね。
それで連ドラって、何に出ていたんですか!?」
『【廃妃尹氏】だよ。』
「すごいじゃないですか!?」
『廃妃尹氏って、どんなドラマなの!?』
美華は、李氏朝鮮王朝は詳しくないもんなぁ……。
「廃妃尹氏って言うのは、 李氏朝鮮王朝の9番目の国王の成宗(ソンジョン)の2人目の王妃で、10番目の国王で暴君と言われた燕山君の生母の事で、嫉妬深くて策略家として宮中で問題を起こしまくって、最後には毒薬を飲まされて死んでいった王妃の物語なんだ。 」
『凄いドラマみたいね。
それで、その廃妃尹氏の中でどんな役をやってた人なんですか!? 』
『彼女の役柄は、廃妃尹氏が入宮して淑儀(スグィ、従二品相当)だった時に仕えていた女官見習い役で、真面目な見習い女官が、だんだんと淑儀(スグィ)様の頼まれ事で、悪に手を染めていき、尹氏が王妃になった時に尚宮(サングン)に昇格して王妃付の尚宮(サングン)となり、最後には尹氏と共に毒薬を飲まされて死んでいくって言う難しい役を演じていたよ。』
「なんか、観てみたいですね。
私も、この女官役はとても難しそうな役柄だと思います。」
『まだ19才だぜ!
女優として、磨けば更に光りそうな子なんだ。』
「それで、王(ワン)部長にしてみたら、日本でデビューさせなくても韓国国内でもっと勉強させて、一流になってから高額ギャランティーで、活躍の場を日本に移しても遅くないからと渋っているんですね。」
『その通りなんだよ。
良く王(ワン)部長の考えがわかったな!』
「そりゃあ、出来る子は外に出したくないのは、どこでも一緒ですよ。」
『そうよねぇ。
極端に言えば、必ずや数年後にドル箱に化ける新星MUSICのアイドルをジェームス事務所に移籍さすか!?と言うのと同じですからね。』
「特に、新星グループは全て独立採算制だから、本社としても良い人材の確保は必須だし、有望株は手放したくないのは、当然ですよ。」
こいつら、二人とも良く解ってるじゃないか!



