『彼女さぁ、高3の夏に川田君にフラれて泣いてたんだよ。』
「マジで…!?」
『うん。
ほんとは内緒にしといてって頼まれてたんだけど……、実は直美ネッ、夏休みに川田君を近所の喫茶店に呼び出したんだ。
直美ったら、目一杯お洒落して、大人しくアイスカフェオレ飲みながら川田君を待ってたの。』
「菊ちゃん(川田の事)は来たの!?」
『えぇ、直ぐに来てくれて、どうしたの!?って聞いてくれたんだけど、直美がなかなか切り出せなくてモジモジしてたら、川田君に【なんか悪いもんでも食ったんか!?】なんて聞かれたから、直美が【違うわい!菊太郎に愛の告白しにきたんじゃい!】なんて言っちゃってさぁ、でも川田君はそんなの本気に取ってくれなくて、また直美が何時もの様にボケてると思ったらしく、喫茶店でさんざん夫婦漫才みたいなのを繰り広げて、結局それで終わったんだって。
その後、わたしと千恵(高校時代の友人の成山)と3人でファミレスで合流して話を聴いてたんだけど、直美さぁ、本気だったらしくてずっと泣いてたんだ。
彼女さぁ、将来の事でも悩んでいたんだ。』
「どういう事!?」
『川田君と、上手く交際が出来るようなら女優の道に、ダメだったらお笑いの道にって!
好きな人に、バカみたいな事して笑わせる職業は嫌がられるかも!?って思ったみたいよ。』
「直美の奴……。
でも、この間菊ちゃんに会ったけど、なんも言ってなかったしなぁ。
それに、菊ちゃんも直美の事好きだと思ったんだけどなぁ。
なんやかんや言いながらも、いつも一緒に居たし、何度か二人っきりでもデートみたいなのをしてたんだぜ!」
『そうなの!?初耳!!!
わたしさぁ、直美の泣くとこ初めて見たわ。
いつも元気だし、よっぽど好きだったんだね。』
「それにしても、直美らしいっちゃあらしいけど、肝心なところでガッチリ決められないってのは、あいつの普段が普段だから仕方無いと言えば仕方無いんだよなぁ。
今度、菊ちゃんにあったら、それとなく探り入れてみようっと!」
『今話したことは内緒にしといてね。』
「あぁ、わかった。」
その時、部屋のドアベルが
【ピンポーン】
『何かしら!?』
「ディナーが届いたんだよ。」
俺は、ドアに近寄りセーフティロックをしたまま、少しドアを開けた。
『ディナーを御持ちしました。』
「はい、御苦労様。
直ぐに開けますから。」
と言って、一旦ドアを閉めてセーフティロックを開けてから、再びドアを開けた。
『クリスマスディナーのコースでございます。
そちらのテーブルにセットさせて頂きますね。』
「はい、宜しくお願いします。」
セットされていくコース料理を見ながら、美華が
『りゅう、凄く美味しそうね。』
「そうだね。
それじゃあ、まずはこのノンアルコールのシャンパンで乾杯しようか。」
『メリークリスマス!』「メリークリスマス!」
と言いながら、軽くシャンパングラスをカチッ!と優しく当てて乾杯したら、
『オードブルでございます。』
と言って、ホテルのスタッフがワゴンからテーブルの上に冬野菜のマリネと名古屋コーチンのササミのタタキが出てきた。
その後も、キノコと根野菜の温サラダやコーンスープとクルミ入りのパンに続いて、 舌平目のグラティネが!
ここで一旦、お口直しとして白桃のソルベを食べた。
「とっても美味しいな。」
『うん。
いよいよメインディッシュね!
何かしら。楽しみ~‼』
『お待たせしました。メインディッシュの松阪牛のフィレステーキでございます。』
「切ってあげようか!?」
『大丈夫よ。
とっても柔らかで、ナイフがスッーって入っていくわ。』
「そうだね。とっても柔らかいな。」
メインディッシュを堪能したら、大好きなチーズがドライフルーツや蜂蜜と一緒にお皿に取り分けてくれている。
そして、フルーツとデザートのマンゴープリンの後にコーヒーで〆だ。
コーヒーと一緒に運ばれてきたのは、お皿にかわいく盛り付けられたチョコレートとキャラメルとマカロンだ。
甘いものがあまり得意じゃないが、この最後に出てきたプチフールのチョコレートやキャラメルは、大人の味と言うかなかなか甘さ控えめで美味しかった。
たっぷりと2時間かけて堪能したディナーは、とても満足出来る旨さだった。



