豚まん食べて暖まってきた頃、ちょうど予約していた高級天心や海鮮料理が自慢のお店、萬珍樓に到着した。
創業40年近いこのお店の萬壽宴コースをじっくりと時間を掛けて堪能して、車に戻ってきた。
『りゅう、どうもごちそうさま。
美味しかったぁ。
前に、お祖父ちゃんに連れてきて貰った中華料理のフカヒレの姿煮よりも、萬珍樓のフカヒレの姿煮のほうが美味しかったわ。
それに、生湯葉刺しって初めて食べたよ。』
「満足してくれた!?」
『もちろん‼
もう、お腹いっぱい。
これから何処に行くの!?』
「横浜美術館。
前に美華が好きだって言ってた、銅版画家の柳澤紀子展がやってるんだ。」
『本当に!?
凄い凄い!
めちゃくちゃ行きたかったんだ。
版画家ってさぁ、5,000人くらいいるんだけど、柳澤紀子先生ってトップ50の中に入るほどの人なんだよ。』
「そうなんだ。
今日は週末だから、朝からずっと居るってパンフに書いてるよ。
大好きな先生に会えるね。」
『やったぁ!
去年は、わざわざ静岡県まで個展観に行ったんだから。』
「今回は、自然と人間を宗教的な角度から捉えた作品を中心に展示しているんだって。」
『もう今から楽しみだわ。
こんな素敵なサプライズ、さすがマイ ダーリンだわ。』
「まだまだ沢山計画してるんだから。
いつもお互い忙しくて、なかなか一緒に居られないから、今日は夜までたっぷり楽しんでね。」
『わざわざありがとうね!
めちゃくちゃ忙しいのに、こんなワガママな私の為に、頑張ってくれたりゅうのその気持ちがスッゴク嬉しくて涙が出そう。』
「そんな大袈裟なもんじゃないから。
俺は、美華の笑顔を見ていたいもん。
その為なら、何だって出来ちゃうんだから。」
『今、さらっとキザなセリフ言わなかった!?』
「ハハハ…。
言ってみたかったんだもん。
さぁ、着いたよ。
今回の個展には、新作を含めた65作品が展示しているから。」
『そんなに沢山!?
今回の個展は、結構大きな個展なのね。
全部観て回るわよ。
さぁ、行きましょ‼』
といって、車から降りたら二人は美術館の中へ入っていった。
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黄 律姫(ファン・ユリ) 、通称名は桧山 律子(ひやまりつこ)。
桧山 隆一の父の妹、叔母にあたる。
父の8才年下で37才だ。
若い頃に大恋愛の末、親の反対を押し切り学生結婚までしたが、大学卒業を待たずして離婚してしまい、卒業後はヨーロッパで絵の勉強を続けていた。
数年前から、日本に戻ってきて、今は横浜美術館の副館長を勤めているのだ。
母親(梨泰院イテウォンにいる俺のばあちゃん)が恐くて、実家には殆ど寄り付かない、破天荒な叔母さんだ。
「実は、俺の叔母さんがここの副館長してるんだ。
それで、チケット送って貰ったんだ。」
『りゅうの叔母様がいらっしゃるなら、最初から教えてよ。
もう、緊張しちゃうじゃない!』
「そんな気を使うような叔母さんじゃないから!
普通の何処にでもいるオバさんだから。」
『誰が、何処にでもいるオバさんだって!?
まぁ、立ち話もなんだから、こっちにいらっしゃい!』
と言って、館内にあるCafe 小倉山に入っていった。
「ユリ叔母さん!!!
ご無沙汰してます。
チケットありがとうございました。
いつ見てもキレイですね。
20代でも通りますよ。」
『お世辞は良いから。
こちらの可愛いお嬢さんを紹介しなさいよ!
隆一の彼女かい!?』
「はい、滝本美華さんです。」
『はじめまして、滝本美華と申します。
今回は、チケットを取ってくださりありがとうございました。』
『そんな、改まった言い方しなくても良いわよ。
美華ちゃんね。
私は、桧山律子。
隆一の父さんの妹になるんだけど、お姉さんと呼んでくれれば良いからね。』
「その年でお姉さんって!」
『何か言った!?
また昔みたいに遣られたいの!?』
「美華、ユリ叔母さんは、こう見えて極真空手の師範代並みの腕前なんだよ。」
『……。
こんなに華奢なお姉さんが!?
凄い!強い女性に憧れちゃうわ‼
でも、どうして律子お姉さんなのに、ユリ叔母さんって!?』
「あぁ、本名が黄 律姫と書いてファン・ユリって言うんだ。」



