夏休みも終わり、毎日自宅と大学とバイト先を行き来すると言うお決まりのコースだ。
残暑の蒸し暑さも徐々に緩和していき、随分と過ごし易い毎日になってきている。
今日は日曜日。
大学は休みだが、韓国から戻って来た高山社長から朝イチで連絡があり、今から新星MUSICに顔を出すことになった。
『隆一、今日は日曜日なのに、バイトかい!?』
「バイトって言うか、高山社長が韓国から戻って来て、何か話が有るみたいで呼び出されたんです。
正規の業務は、今日は正社員だけで、バイトスタッフは休みの日なんで、お土産でも渡されるのかなぁって思っているんだけど。」
『そうか!
高山君は、元気にしてるみたいだな。
ワシからも宜しく言っといてくれよ。』
「わかりましたアボジ(親父)。」
『ところで彩は!?』
「ヌナ(姉貴)は、オムニ(お袋)と一緒にエステの予約してるからって、さっき出掛けていきましたよ。」
『相変わらすだなぁ。』
「オムニ(お袋)が、
……父さんは昨日遅くまで試験の添削していたから、ユックリ寝かしときなさいよ。……
って言うから、起こさないように静かにしてたんだ。」
『そうか。
じゃあ、ワシはもう暫くノンビリ横になっとくよ。
出掛けるときは、戸締まりしといてな!』
「わかりました。」
俺の返事を背中で聞きながら、アボジ(親父)は、また寝室に入っていった。
俺は、シャワーを浴びて黒の綿パンに白のボタンダウン、細身のネクタイに黒のサマージャケットと言う格好で、携帯と財布と車のキーを持って駐車場へ。
愛車のセイバーに乗り込み、すぐ近くの新星MUSICまで向かった。
新星MUSICは、日曜日だと言うのに相変わらす忙しそうである。
社内はひっそりしているが、営業用の社用車が全部出払っているので、《忙しそう》となるのである。
1階の受付で高山社長の事を聞いたら、もうすでに出社して来ているとの事で、俺が来たら直ぐに社長室に来るようにとの事であった。
5階に上がり、社長室のドアを
コンコンコン‼
「桧山です。失礼します。」
『どうぞ!』
中から高山社長の声が!
「御早う御座います。
只今参りました。」
『おぉ、桧山君おはようさん。
良く来てくれた。
まぁ、こっち来て座りなさい。
そこの冷蔵庫の中の飲み物、勝手に飲んでかまわないから。』
「それじゃあ、ペットボトルのコーン茶を頂きます。」
『それで、今日来てもらったのは、実は君はアルバイトだが主任の役職を遣ってもらっているよな!』
「はい!」
『そこでだ、来月行なわれる恒例のマネージャー研修に、君を推薦するから、21日間頑張ってきてほしい。』
現在、新星グループでは役職を持たない幹部候補生向けの幹部候補生研修、主任・次長クラス向けのマネージャー研修、係長・課長クラスの幹部研修の3つの研修制度がある。
「えぇ〜!
マネージャー研修!
大学の講義が………」
『前期の試験も終わったし、学祭前だし、大して授業も進まないんじゃないかい!?
ゼミで忙しくなる前に、研修行っておいでよ!
アルバイトだが、特別に社長の私が自ら推薦するんだから。』
「社長!
3週間ですよ。」
『君が決めたんじゃなかったかな、この研修制度!』
「………。」
と、そこへ…秘書から内線が入り、
トントントン!
『入りたまえ!』
「失礼します。
お呼びでしょうか!?」
『待っていたぞ!
君も、こっちに来て座りなさい。
桧山くんは、彼と会ったこと無かったね!?』
と言われ、隣に座った30才過ぎの男性の顔を伺った。