「あの茶髪の子が、俺の彼女です。」
それを聞いた聖美さんは、
『ふ~ん……。』
と言いながら、鏡越しに俺の彼女を見ながら、頬っぺたを俺の頬っぺたと、くっつけてきた。
「聖美さん、なにやってるんですか!?
真面目にしてください。
それでなくても、彼女はやきもちやきなんですから。」
『そうみたいね。
今にも口から火を吹きそうな顔して、こちらを睨んでるね!』
「冗談無しですよ。
後のフォローをする俺の身にもなってくださいよ!」
『ホホホ……!
まぁ、頑張りなさい!
それじゃ髪、巻いてくわよ!
練習の時より、ちょっときつめに巻くから、痛かったら言ってよね。
りゅう君も今日は驚くわよ。
今まで見たこと無いヘアアレンジメントの世界を見せてあげる!』
「凄い自信ですね!
楽しみにしてます。」
『椅子をあと数cmだけ下げるわよ。
キツくない!?』
「大丈夫ですよ。」
『それじゃあ、もう暫く動かないでね!』
「コンロー見たいですね!」
『ヘヘヘ!
ちょっと違うわよ。
ありきたりの編み込みと一緒にしないでよね。
編み込んで、毛先をロッドできつめに巻いてから色んなデザインを頭に描いていって、パーマ液で形をキープしてから編み込みをほどくと、スッゴく面白いのが出来るんだから。
それが、メッシュとのアクセントとマッチした時、私の作品が完成するって訳!
その為に、アシンメトリーにカットして、編み込みする部分だけ長くなる様にしたんだから。』
「凄いですね。
でも、それってかなり時間が掛かっちゃうんじゃないですか!
間に合うんですか!?」
『りゅう君、アタシを誰だと思っているの!?
この聖美様に掛かれば、時間の壁なんか技術で簡単にクリアするんだから!
ホホホ……!』
「わかりました!わかりました!
ちょっと聖美さん、声が大きすぎますよ。
隣のブースの人が笑ってますよ。」
と言うと、いきなり隣のブースを睨み、
『何、笑ってるのよ!
アタシに喧嘩売ってるの!?』
と、睨み返す始末で、困っちゃいますよ。
喧嘩売ってるのは、貴方じゃないですか!
とは言えないので、
「ウォホン!」
と嘘臭い咳払いをして、
「聖美さん、真面目にいきましょ!
時間無いんですから!」
『まぁ、そうよね!
でも、私は喋りながらでも、ちゃんと手は動かしていたんだからね。
編み込みは終わったわよ。
じゃあ、次は編み込んだ部分の残った5cm程の毛先全部に、この3種類の細めのロッドを巻いてくわよ!』
と言いながら、既にコームを巧みに操りながら、パーマ液を掛けながら凄いスピードで毛先が巻かれていった。
今度は編み込んで無い部分を、かなり太めのロッドで巻かれ、 最後にパーマを定着させるための液を掛けてからキャップを被せ、加温式の最新型の多機能ヘアプロセッサー をセットして、
『このまま15分くらい置いておくからね。』
「お疲れさま。
一番遅れていたのに、いつの間にか先行してるみたいですね。
ちょっと休憩出来ますね。」
『なに言ってるのよ。
今のうちに、パーマ液のボトル片付けたり、カットした髪の毛を掃いたり、遣ることはまだまだいっぱい有るんだから。
そんなところも、ちゃんとチェックされるんだから!』
「マジで!?」
驚きながら、聖美さんの真剣な横顔を眺めていた。
そんな桧山を、観客席からジッと眺める恋人の滝本美華と、片思いしている同じ学部の藤浪であった。



