また藤浪のワガママが始まった。
「俺さぁ、行けないかも!」
『どうして隆一くん!?』
「行きたいけど、今カットモデルやってるから、10日の日曜日に開催される大会まで日焼けしたらいけないんだった!
だから、暑くても通学にフルフェイスのメットかぶってるんだから!」
『な~んだ!
じゃあ私も行かない!
それじゃあ隆一くん、これから時間有るんだったら、一緒にお茶しない!?』
「これからバイト先に顔でも出そうかなぁって思ってたんだけど、30分くらいなら良いよ。
岩崎も一緒に学食行こうぜ!」
『えぇ~‼
学食でお茶するの?
それより白金に美味しいケーキ屋さんが在るんだけど、隆一くんと二人で行きたいな!』
「それはダ~メ!
学食のコーヒーで我慢しな!
行こうぜ岩崎!」
『二人とも待ってよ!
あたしも行く!』
学食には、和田も関川もいた。
「もう帰ったのかと思った!」
『いやな、こいつと夏休みの計画を立てていたんや!』
こいつとは、和田の彼女の関川弥生の事である。
「オッ、まさか二人でラブラブ旅行でも行くのか?」
『旅行って言うか、俺の実家に連れていこうか思うてな!』
「実家って、確か芦屋だったかな!?」
『そや!
この時期は、俺の実家は掻き入れ時やさかいな!
こいつにも手伝うて貰おう思てな!』
和田の実家は、創業110年の老舗の寿司・懐石料理店【和田屋】で、こいつ和田明良(わだ あきら)はそこの次男坊である。
6つ年上の兄貴が、高校を卒業と共に実家の稼業を手伝っているので、弟の明良は呑気にキャンパスライフを楽しんでいる。
それでも、この時期は土用の鰻や、夏バテ防止に鰻とかで、毎日忙しいらしく、高校時代も夏休みの間はウェイターをしたり、炭をおこしたり、洗い物をしたりと忙しく手伝っていたそうだ。
そして、今度は大学で出来た彼女を連れて実家の稼業を手伝うのだと言う。
「それで、関川は大丈夫なんか!?」
『問題無いわよ!
これでも一応旅館で仲居のバイトだってしたことあるんだから。
あきらの家族にだって気に入られる自信有るわよ。』
「そっか!
頑張れよ。」
『桧山は、やっぱ新星MUSICでバイトなんだろ!?』
「まぁな!
ほぼ毎日仕事してると思う。」
すると藤浪真優こと、自称【まゆゆ】が俺の腕に自分の腕を回しながら話し始めた。
まぁ、俺はすかさず腕を引き抜いたけどね‼