テレビで観るのとでは大違いである。
口は悪いし、態度がデカイ。
その上ワガママである。
「小出さん、そろそろ休憩が終わりますので、スタンバイの方、宜しくお願いします。」
と言うと、
『エ~ッ!
もう休憩が終わりなの!?
ちょっと早すぎるんじゃないの!?
私さぁ、まだジュース飲み終わって無いんですけど!』
もう手が付けられませ~ん!
ようやく1日目の収録が終わり、機材や小道具を片付けていたら、
『桧山ちゃん、このボード重たかったろ?
肩は大丈夫か!?』
「池内ディレクター、ご心配有り難うございます。
でも、大丈夫です。
普段から、空手で鍛えてますので。」
『ヘェ、桧山ちゃん空手やってるんだ!
何処の流派なんだい?
因みに、俺は極真空手の三段だぜ!』
「押忍(オス)!
私も極真空手をやっています。
東京城西支部、新宿道場に10年通っています。
現在、二段です。
来月の有段試験で三段を受ける予定です。」
『凄いネェ!
10年って言ったら、小学一年生からやって来たんだ!?
中学生の時には、二段かよ!
俺なんか、高校三年生で、やっと二段だぜ!
でもまぁ、俺の後輩になるんだな!
俺も東京城西支部の、府中道場だ!
まだ10代の頃は、毎日山田支部長のシゴキを受けていたんだぜ。』
「そうなんですか。
これからも宜しくお願いします。
押忍!」
『こちらこそ、しっかり頼むな!
心強い後輩がアルバイトに来てくれたから、しっかりコキ使っていくぜ!』
「池内ディレクター…、そんな殺生な。」
『ハハハ、まぁがんばろうや!』
「押忍!」
『ところで今度、城西支部の各道場が集まっての、交流試合が有るだろう!?』
「押忍!」
『参加しろよ。
俺も久しぶりに参加するから、乱取りやろうぜ。』
何か、同じ武道を歩んでいる先輩が近くに居るのって、頼もしいし、ワクワクするし、血がタギってくる。
たとえアルバイトの俺でも、一緒に仕事をしていて楽しい。
機材を積み込んでテレビ局に戻ってきた。
疲れている俺に比べたら、美華はメチャクチャ元気に安西プロデューサーと談笑しながら、車から降りてきた。
「美華、一緒に帰るぞ!」
『うん!』
「疲れたか!?」