3月1日
東京都立武蔵野芸術高等学校の卒業式
工芸科345名
工業科331名
定時制卒業生58名
計734名が大講堂に集合している。
入学時よりも、30名程少ない。
それは、強制退学が殆どである。
まぁ、バカやり過ぎた奴等は、直ぐにバッサリ切られてしまう学校だったので、警察沙汰になったら即退学なのだ。
俺の元居た機械科も、3名暴走行為で高速道路上で逮捕され、そのまま少年院送りで退学である。
そりゃ、750ccのバイク20数台で40名ちかくが発炎筒を焚きながらの暴走行為は見逃せないわな!
その上、パトカーを金属バットで走行中に殴ったり、高速道路を逆送したんだから少年院送りは仕方ない。
他校の生徒も沢山居たが、武蔵野芸術高校の生徒も俺のクラスを含め10名も居たそうだ。
厳かに行われた卒業式も終わり、教室で最後の挨拶をして学校を後にした。
今日はバイトもお休みを貰っているので、最後に友達と近くの中華料理のファミレス【シルクロード】に集合していた。
「吉川遅い!」
『ゴメンゴメン!
ちょっと陶子(従兄妹で分家の一人娘)に捕まってた。』
「またいじめられてたのか?」
『俺が武蔵野芸大の陶芸研究学科に受かったのが気に入らないらしいよ。
絶対におちると思っていたそうだよ。
これも全て桧山っちのお陰だもんな!
桧山っちの作ってくれた入試予想問題をやったお陰だ!
あの予想問題集の8割方が入試に出題されてたもんな!
よくもまぁ、あそこまで的中した問題集を作れたな。』
『もしかして桧山君って超能力者?』
「真里江、何言ってんだよ。
あんなもん簡単に解るだろう。
あれだけ偏差値の高い大学なんだから、過去の入試問題をみたら、出題の意図が解るだろう。」
『分かんない。』
『私も分かりませんわ!』
「愛ちゃんまで!
ようするに、わざと難しい問題を作れば良いだけの事なんだよ。
大体、過去の入試問題の出題の傾向は、教科書の太字からは一切出ていなかったから、それ以外のところから予想して、ひねくれた考えでつくってみたんだよ。」
『まぁ、大したもんだ!
流石、進学塾の文理学園の息子だよ。
親父さんも喜んでるだろうなぁ~!
息子が跡を継いでくれるんだから!』
「いや、俺は跡を継がないよ。
姉貴に押し付けた。
まぁ、お袋のダンス教室なら片手間で遣っても良いけどね。」
『リュウ、ヒドイ!
片手間でなんて、お義母様が可愛そう!』
『ところで、大学の入学式っていつ?』
「W大学は、4月1日に戸山キャンパスの記念会堂で学部合同の入学式を遣るんだ。
吉川は?」
『武蔵野芸術大学もおんなじ日だよ。
真里江っちのT工大学も一緒の日。
それにしても、マコチャンも愛ちんもW大学、桧山っちと美華りんもW大学でいつも一緒に居られて良いなぁ。』
「俺も、そう思っていたんだけど、どうやら俺は埼玉県に在る所沢キャンパスなんだよなぁ。
山手線新大久保から池袋駅まで行って、 西武池袋線に乗り換えて埼玉県の小手指駅で下車して、ここまで45分だろ。
それから、小手指駅南口から西武バスで大学まで15分掛かるから、家から歩いて新大久保までが5分くらいとしても、1時間5分。
乗り換えのロスタイム入れると、通学だけで1時間10分は掛かるから、大変だよ。
てっきり家と目と鼻の先に在る戸山キャンパスだとばかり思っていたから、ショックだよ。」
『ちょっとリュウ!
それ本当!?
私聴いてないわよ。
何のために同じ大学を選んだと思っているのよ。』
凄い勢いで美華が噛みついてきた。
聴いてないわよって、言ってなかったから当たり前だ。
なかなか切り出せなかったんだよなぁ。
俺だって、所沢キャンパスだって知ったのは、大学から入学の案内が届いた一昨日なんだから。
マコチャンも愛ちゃんも心配そうに美華の様子を伺っている。