翌日、社長の指示通り朝の8時半に美華と一緒に出勤した。



そして、言われた通り4階の芸能部 営業部、第3営業課と書かれてある部屋に遣ってきた。



ドアをノックして、大きな声で



「お早うございます。」と言って、入っていった。



部屋の中には10名の社員さん達が既に出勤してきており、コーヒーを飲んだり新聞を読んだり、朝の情報番組を観たりしていたが、こちらに気付き



『お早う、君達だね。

待ってたよ。

オーイ、皆、集まれや!

この二人が俺達のアシしてくれるバイトの子達だ。

さぁ、自己紹介しな!』



気さくな感じの30才過ぎの男性だ。



先ずは俺から、



「初めまして!

桧山隆一と申します。

これから宜しくお願いします。」



リュウに続いて私も、



『滝本美華と申します。

宜しくお願いします。』



二人揃って深々と頭を下げた。



『俺は、この第3営業課の課長を遣ってる玄田敏春だ。』



「もしかして、ヒョン・ミンチュンさんですか?」



『そうだけど…もしかして、君は韓国から?』



「いいえ、在日なんです。」



『そうか!そうかぁ!

これから宜しくな。』



「『宜しくお願いします。』」



『俺は、係長の安川……』『私は、次長の河野……』『自分、主任の池内……』……



順番に自己紹介も終わり、係長の安川英之さんが俺の担当に付いてくれた。



彼は、以前一緒に働いていた企画推進室の古田係長の後輩にあたり、古田係長が企画推進室長になった時、次長から係長に昇進したんだそうだ。



美華には女性の次長さんで河野一美と言う人が担当に付いていた。



俺の教育係的な存在の安川英之さんも、勿論在日の人で、本名は安 英之(アン・ヨンジ)さんと言う。



美華の方に付いている河野一美さんの本名は河 一美(ハ・イルミ)さんと言う。



俺と美華は、その二人から第3営業課の業務について説明を受けているところだ。



『新星MUSICには、各部署ごとに営業部と言うのが在ります。

芸能部の営業部には第1営業課から第3営業課迄の3つの課から出来ています。』



『僕達第3営業課とは、扱うタレントが違うんだ。

第1営業課がメインで、音楽関係のタレントの売り込みや活動の支援、要するにミュージシャンやアーティスト、歌手等をマネージメントする為に存在する。

第2営業課は、それ以外のタレント、要は役者・芸人・アナウンサーなどだな。

そして、我らが第3営業課は、本社からのタレントとか外国からのタレント、そして去年の春からは留学生の管理も行うようになったのだ。』



『ここまでの説明は分かるわね!?』



「『はい。』」



『今現在、この第3営業課が担当しているタレントは、8名、そして留学生20名の計28名!

それを僕達10人と君達2人で管理していくけど、何か質問は?』



「今の分担って言うのは、どの様になっているんですか?」



『留学生は、男性スタッフ3人が10名の男子留学生を、女性スタッフ3人が10名の女子留学生を担当している。

後は、本社からのタレント6名を3人のスタッフで担当して、中国からの2人組ユニットを1人の男性スタッフが担当している。』



「留学生のマネージメント方法とは、具体的にどの様な事を行うんでしょうか!?」



なんか、リュウの目が凄くキラキラしている。



メチャクチャ楽しそうに質問しているリュウを見て、何故かは分からないけど、胸の奥の方がチクッとしてる。



桧山隆一としては、そんな滝本美華のほんの僅かな気持ちの変化には気付く事もなく、営業課の仕事に惹かれていったのだった。