2学期が始まった。



9月1日の月曜日、何食わぬ顔でリュウが登校して来た。



「皆、オハヨ~!」


『桧山、お前2週間も休みやがって、美華ちゃんが心配してたんだぞ!』



「行き先言うの忘れてた!

って言うか、行くこと自体言うの忘れてた!」



『リュウ、酷くない!?

私がどんだけ心配したと思ってるのよ。』



「ゴメンゴメン!

昨日も姉貴に散々言われたよ。

心配してうちまで電話して来てくれたんだね。

俺も、後から気が付いて電話しようと思ったんだけど、山には電話無いし、携帯繋がらないし、先輩が買い出しに行くときに付いていってって思ったんだけど、そんな状況でも無かったし、本当にゴメンな!」



『もう良いわよ。

何事もなく無事に帰って来たんだから。』



『美華は甘いわねぇ。

もし陶一朗が2週間も連絡しないで行方不明だったら、私はその間に次の彼氏探すところよ。』



『オイオイ、マリエっち、それは酷いだろうよ!?』



『じゃあ貴方は、私が2週間も心配しながら毎日泣いて過ごせば良いと思ってるの!?』



『そういう訳じゃ…。』



「吉川、惚れたお前の負けだ!

真里江が安心して過ごせるように、お前が頑張れ!」



『リュウ、あんたが言うの!?』



「ゴメン…。

俺も気を付けるから。

その代わり、今回のお詫びに何でも言うこと聴いてあげるから。」



『マジで!

やったぁ~!

じゃあ、何かお願い考えとく~!』



『皆、仲が良いねぇ。

僕も愛さんと同じ学校なら良かったのに…。』



『マコチャン、良く言うぜ!

一緒に住んでるんだから、そっちの方が羨ましいよ。』



『だったら、吉川君も谷さんと一緒に住めるようにお願いしたら!?』



それを聴いて、皆、大爆笑しているところに始業のチャイムが鳴り、教師が教室内に入ってきた。



9月から12月は、完全にセンター試験に向けての最終的な仕上げの如く、凄いスピードで授業も進み、俺達はひたすら…いや、がむしゃらに頑張っている。



ある日の昼休み



『マリエっち、ついていけないよぉ~!』



『でしょう!

私も、何がなんだか…

あまりにも授業の進む早さが早すぎて…。』



『私も!

特に理数系は、方程式が理解できなくなってきたわ。

理数系の得意なリュウはどうなの!?』



「…特にこれと言って難しい物も無いし、応用問題なんかもそんなに捻ってないし…。

去年や一昨年の数学や物理の入試問題も見たけど、今習っているのと差ほど変わらないよ。

それより問題は暗記の多い歴史や世界史、地理なんかだよ!

どの大学に行くかによって、選択も変わってくるから、どこを重点的に遣るかだよなぁ。

俺は、W大学だから地理は無いから捨ててるけど、日本史の方は小さな字で書かれてある注釈も見逃せないんだよなぁ。」



『そこまで出るのか!?』



「何を言ってんだよ吉川!

あの小さな字で書いてある注釈なんかを選んで試験に出た年も有るくらい、あの注釈は大事なんだぞ!

あとは、それらの解答も全て漢字で書かないといけないってパターンも多いから大変だよなぁ。

武蔵野芸大は、その点日本史は無いから良いよなぁ。

世界史だから、一部の中国史以外は殆ど漢字が出てこないから。

その代わり、ルイ何世、何世ってのは大事だから、しっかり把握しておかないとだな!」



皆、悲壮感満載の顔でこっちを見ていた。