KISS AND SAY GOOD-BYE

 



ひまわりTVを出て、トコトコと二人で新宿のオフィース街を歩いている。



『桧山君って、どの辺に住んでるの!?』



「俺の家は新大久保だよ。」



『新大久保!?

あそこってコリアンタウンが近くに在るよね。

いつも美味しそうな匂いがしてるから、一度あそこで食事してみたかったんだよなぁ。』


「じゃあ、今から俺の親父の実家に行ってみるか!?

ばあちゃんちが韓国家庭料理の店やってるんだ。」


『エッ、桧山君って在日韓国人なの!?』


「そうだよ。

桧山隆一って言うのは通称名なんだよ。

本名は、黄隆元(ファン・ユウォン)って言うんだ。

驚いた!?」


『別に。

驚いたって言うより、そうなんだって思っただけ。

じゃあ、お父さんもそこで働いてるの?』


「親父は学習塾を経営しているんだ。

お店は、親父の兄さん、俺の叔父さんが後を継いで頑張っているんだ。

じいちゃんとばあちゃんが、二人で小さなホルモン屋さんを始めて、少しずつお店を大きくしていったんだ。

そして、叔父さんが後を継いでからは、コリアン・ダイニング《梨泰院(イテウォン)》って名前にして、安くて美味しい韓国家庭料理を出すお店にしたんだ。

メニューも凄いんだから!

1階は焼肉がメインで、2~3階はお座敷になってるんだ。

4階には、大宴会場になってるし、毎日忙しそうにしてるよ。」


『凄いね!

ホントに良いのかなぁ!?

今、忙しいんじゃないの!?』


「大丈夫だって!

俺は、いつもそこで晩飯食ってるんだ。

親父もお袋も忙しいから、なかなか一緒に食事出来ないからな!

梨泰院(イテウォン)の裏が、ばあちゃんちで、隣に俺んちが在るんだ。」


『へぇ。

ソルロンタンって有るのかなぁ!?』


「有るよ。

良く知っているね。

食べたこと有るの?」


『ううん。無いよ。

でもね、テレビの情報番組で観たこと有るんだ。

なんか、とっても美味しそうだった。』


「普通、ソルロンタンって専門店で食べるんだよ。

でも、ばあちゃんとこは、死んだじいちゃんが大好物だったから、メニューに入れたんだ。

元々、漢字表記しないんだけど、当て字で、雪濃湯って書いて、ソルロンタンって読んでるんだ。

読んで字のごとく、雪の様に真っ白いスープが特徴なんだ。

だいたい30時間以上牛の肉と骨を煮込むんだから、凄い手間がかかる料理だよ。」

『知らなかった。

でも、ホントに桧山君って、料理に詳しいね!』


「まぁな!」