『リュウ、遅い!

もう、社長のご家族来てる頃だよ。』



「ゴメン、ゴメン!

途中、工事中ん所が有って、迂回しないといけなかったから遅れちゃったんだよ。

さぁ、早く後ろに乗って!」



『急いでても気を付けて運転してよね♪』



「任せとけって!

直ぐに着くから、心配すんなって!

安全運転で走るから。

フライトの時間までにはまだ3時間近く有るしね!」



『それでも、気を付けてね。』



と言って、チュッって頬っぺたにチューしてきた。



「美華、自宅の前で大胆!」



『アッ、忘れてた。

パパ見てないよね!』



と言いながら、自宅のドアの方をチラッと見ながら笑っている。



十分に落ち着いてきた俺は、美華を後ろに座らせてから、しっかり抱きついとけ!って言ってからメットをかぶり、セルモーターのボタンを押して、エンジンを始動させた。



ドドドドッと低くて大きな音と共に、振動が体に伝わってきた。



1分ほどアイドリングをしてから、ユックリと動き出した。



次第にスピードは上がり、法定速度の時速60km/hギリギリで新星MUSIC日本支社へ向けて走っている。



30分もしない内に到着したら、既に駐車場に高山社長ご夫妻と息子の長寿君(チャンス君)と妹の荷娜(ハヌル)ちゃんが降りてきていた。



「遅くなりました。」



『私達も今しがた着いたところなのよ。』



「オジチャンおそいぞ!」



『ハヌル、口が悪いわよ。』



「ハヌルちゃん、オジチャンじゃなくてお兄ちゃんだよ。」



『相変わらずハヌルちゃんはリュウの天敵だね!』



「ハハハ…

どうして俺にはオジチャンって言うのに、美華にはオバチャンって言わないのかなぁ。

まっ良いか!

さてと…!

社長、それではそろそろ行きましょうか?」



『そうだな!

桧山君も滝本さんもこっちの車に乗って!』



「それじゃあ失礼します。」



と言って、 ショーファードリブン(お抱え運転手付き高級車の事)のロールスロイスのリムジンにのりこんだ。



美華に、車外で靴を脱ぎたくなるね!って言ったら笑われてしまった。



そりゃそうだよなぁ。



美華んとこの親父さんも、お抱え運転手付きのベンツのリムジンに乗ってるんだから。



『それにしても滝本さんのご両親、良く今回の旅行を許してくれたな!』



「はい社長、高山社長のご家族とご一緒に訪韓するなら、心配ないだろう!って許してくれました。

私、韓国行くの初めてなんで、とても楽しみで昨日あんまり寝られなかったくらいです。」



『楽しみにしていなさい。

向こうの韓流スターやドラマのロケーションで行ってみたいところがあれば連れていってあげるし、美味しいお店にも連れていってあげるからね。』



「ありがとうございます社長。」



『桧山君は、韓国行くのは初めてじゃないだろう!?』



「はい、大体春休みや夏休みや冬休みって言う長期の休みには、たいてい家族か、ペクブ(父の兄に当たる伯父)と一緒に仕入れの荷物持ちとして行ったりしてました。」



『そっかぁ!

ハングル語も達者だし、地理にも詳しいから私も安心だよ。

私が忙しくて動けないときは、桧山君がうちの家族もついでに頼むよ。

特に家内は方向音痴だから。』



「あなた、ハングル語で私の悪口言ってませんか?」


ハングル語はあまり得意では無いと言ってたけど……感の鋭い奥さんである……