コーヒーが出てきたのとほぼ同時に、喫茶店の扉が開いて美華が入ってきた。



一瞬キョロキョロと見渡して、俺を見付けるとこちらにツカツカと遣ってきて、向かい側のソファーに座った。



『お待たせ…』



「元気そうだな。

何してた!?」



『……実は、……日美展の日美絵画展に出品するためのパステル画を描いてたの。

最初は、色々考え過ぎて気を落ち着かせる為に描いてたんだけど、担任が【絵画展に出品してみないか!?】って言うからついその気になって描き始めたんだけど……』



「どうした!?」



『……描いてる内に、自分がリュウにとった行動が、とんどん恥ずかしくなってきて……、その上…全然集中出来ていなかったのに、描き上がったその作品を出品しようとしてた事に対しても嫌になってきて……』



「そっかぁ!

俺さぁ、棚橋さんにちゃんと話してきたよ。

もう何とも思ってないから、ほっといてくれって!

美華の事が大事だから、振り回してくれるな!って言ってやったよ。」



『良かったぁ。

私、あの人苦手。

何か、獲物を狙う蛇みたいな目で見てくるんだもん。』



「蛇かぁ~♪

確かに!

ところで、バイトにはもう出ないの!?」



『ううん、高山社長には言ってるんだけど、3月から復帰するよ。』



「来月からか。

って言っても、後半月ちょいか。

アッ、そうだ!

はい、これ!」



『あれ!?

ピッチ(PHS携帯)換えたの!?』



「今度、FOMAにしたんだ。

その番号で登録しといて!」



『分かったわ。

私もFOMAにしようかなぁ。

PHS携帯って、何かダサいもんね。』



「だろう!

これからは、携帯電話もドンドン進化して来ると思うよ。」



『日本の企業は優秀だからね!

その内、タッチパネル式の携帯電話なんか出たりして!?』



「まさかぁ!

そんなのは無理だろう!

幾らなんでもタッチパネルって!

アニメの世界じゃ無いからなぁ。」



『分かんないわよ。

テレビ電話だって、今じゃ開発出来るって言ってたもん。

その内、携帯電話の中にパソコン並の機能を取り込むことだって可能だそうよ。』



「だけど、もしテレビ電話やパソコン並の機能をもった携帯電話が発明されたとして、そんなのは大きすぎて持ち運びできないとかじゃ?」



『でも、日本人の技術力って、何でも小型化してコンパクトな製品にするのが得意だから、きっと夢じゃ無いわよ。

そうなったら楽しみだよねぇ♪』



「だよな!

そんな携帯なら、多分ずっと使い続けるだろうなぁ。

そんな携帯から、新星MUSICのアーティストの楽曲が着信音としてメロディだけじゃなく、歌声も流れるように出来たらもっと楽しく無いか?」



『そんなことが出来たら、凄いよねぇ~♪』



「何か、久しぶりに美華の笑顔を見た気がする。」



『私も、久しぶりに笑ったような気が……』



「色々、心配させてゴメンな!」



『私の方こそ、ゴメン。』