『入って来ないで!』



「美華、話だけでも聞いてくれよ。

俺さぁ…」『言い訳なんか聞きたくないから。 リュウは、棚橋さんと付き合えば良いじゃん!』



「そんな気無いし!

だからさぁ、あれは……」『出ていって!』



『ミカミカ、桧山ッチの話を聞いてあげなよ。』



オッ、ナイスフォロー直美!



『桧山ッチが言ってることが、嘘かも知れないけどぉ、今回は本当にたまたま偶然だったかもしれないっしょ!』


ヤッパ直美ぶっ殺す!



『まぁ、冗談はさておいて、あの何とかって言う女狐なんか無視してたら良いじゃん!

ミカミカの方が、若くて綺麗で優しくて、おちょこちょいで頑固で、意地っ張りだけど一途で……』



『直美ちゃん、もういい、分かったわ。』



「じゃあ美華、話聞いてくれる!?」



『聞かなくても分かってるから!

でもね、私の頭では理解できていても、気持ちが落ち着かないのよ。

リュウは浮気とかする訳無いし、裏切ったり卑怯な事なんてしないってわかっていてもね、あの女の声が頭から離れないし、あの勝ち誇ったような顔がちらつくのよ。

私が大人の女性じゃないのにも色気が無いのにも腹が立つし、リュウが去年の…………!』



「去年の?

何だ?

何かあったのかい!?」



『もういい、何でもない!

今日は帰って!

眠たくなったから、また今度!

直美ちゃん、智恵ちゃんもありがとうね。

ちょっと疲れたからまたね!』



と言うと、頭からスッポリと布団を被ってしまい、壁のほうに背を向けてしまった。



「じゃあ美華、また明日!」



『ミカミカ、またね!

ナルナルも桧山ッチも行くよ!?』



『バイバイ滝本さん!

またねぇ。』


「美華、お大事に!

行くわ!」



『………………』



布団を被った美華は、あの後一言も話さなかった。



病院を後にして、3人でまたバスに乗って学校に戻って来た。



直美は、その足で演劇部に向かい、成山は図書室へ。



俺は、教室で鞄を取ってから、学校を後にした。



そろそろお昼が近いので、近くの喫茶店に停めさせて貰ってる愛車のハーレーに跨がり、ばあちゃんが遣ってるコリアンダイニングの梨泰院(イテウォン)に飯を食いに行った。