Mに捧げる

酔っ払いの転落死。


この不様な父親の最期を、母方の親族たちは嘲笑っているように見えた。


通夜の間、悲嘆に暮れている者は誰一人として見受けられなかった。


この冷淡な対応の裏には正樹が長い間、住所不定無職の博打打ちだったという原因が挙げられる。


両親が離婚する前も、家族四人で食べていくのがやっとだった。


料金未払いで電気が停まったり、大屋が家賃を催促に来たような覚えはないが、貧しい家庭であることは薄々気づいていた。


それでも、と都は思った。


母親だけは父親の死を悲しんでいるに違いない。


両親の反対を押し切り、駆け落ちまでした相手が亡くなったのだ。


けれど、切なる想いは打ち砕かれてしまう。