Mに捧げる

つまりはこういうことだった。


安藤美佐子と正樹は、都が生まれる以前から関係していたが、正樹の結婚を機に別れた。


突き詰めれば、美佐子は正樹に捨てられたという話になる。


『変なこと聞いて、ごめんなさい』都は肩を竦めた。


大人たちの間で、どんなやりとりが成されていたのか、美佐子の心情を察すると、少しばかり切なくなった。


『誤解しないで』美佐子はかぶりを振った。『私が一方的にお父さんを好きだっただけだから』



それが事実なのかは解らない。


けれど、これ以上詮索する気にはなれなかった。


『お茶用意しますね。コーヒーでいいですか』


そう言って、都は立ち上がる。


激しい頭痛を感じたのはその時だった。