Mに捧げる

親指と人差し指の間で軽く回転をかけ、絶妙なタイミングで離してやると、十センチ先で七の目が出た。


同じように三回振る。連続して、七の目が出た。


たまに失敗することもあるが、七の目を出すことだけは得意だった。


他の目も同じ要領だと正樹は言っていたが、七の目は成功確率が高いのだ。


もっとも、七の目以外は殆ど必要なかった。


割れ目を採用した三人麻雀に限り、仮東、起家、配牌を決める時点で重要になってくるのだ。


親の点数は子の一点・五倍になるのだか、割れ目になると、通常の点数に四倍掛けして貰える。


しかし割れ目の親は、もろ刃の剣とも言えた。


取り決めによるが、子に振り込んでも四倍払う仕組みになっている。


三万点スタートだとして、満貫に一度振り込めば、その時点で対局終了となってしまうのだ。


この綱渡りのような三人麻雀が、都は一番好きだった。


四人麻雀でじっくり手を作るのも嫌いではないが、三麻はスリルが味わえる。


たった一枚の牌に天国と地獄を見るのだ。


けれど、父親を失った今、これまでと同じように麻雀を楽しむことが出来るのだろうか。


世界の全てが色を失い、麻雀すら色褪せて見える。


死んでしまおうか。


都は布団の中に潜り込んだ。