Mに捧げる

正樹のアパートに着くなり、電話機の隣に置いてあったアドレス帳をめくった。


しかしそれに目を通す度、都は意気消沈してく。


正樹の友人と思わしき人物の氏名欄の横にはポケットベルの番号が並んでいるのだが、文章の送信コードが解らないのである。


たった一つだけ、固定電話の番号が走り書きされてあった。


そのすぐ隣に『M』という文字を見つけた。


スナックや雀荘の店名なのだろうか。


都は諦めて、別の場所を探した。


正樹がいつも携帯していた手帳になら、友人たちの連絡先や住所が書き記されているかもしれない。


けれど、妙に引っ掛かるものがあった。


アドレス帳の最後の頁、Mの連絡先だけが鉛筆で書かれていたのである。


そして、正樹の手帳がなくなっていることに気がついた。


遺留品として、警察に保管されているか、母親に預けられたのかもしれない。


祈るような気持ちで、都は受話器を取った。