深青のことばかりを思っていたが、この唯香も深青に劣るとはいえ、かなりの能力者である。


 そのせいで、人の気配はもちろん霊の気配も感じられる。


 唯香も、深青と同じように如月家の血筋を継いでいるのだから、血は争えないということである。


「それにしてもさ、お姉ちゃん」





 唯香は気を取り直して、トレーを持ったまま深青の部屋に入ると、テーブルの上にそれを置いた。


「久しぶりに家に帰ってきたかと思うと、部屋に篭りっぱなしだし、一体どうしたの? 

事件、行き詰ってるの?」


「え…? まあ…。

さすがね、唯香。

私のことよくわかってるわ」





 肩をすくめながら、深青は唯香を見つめた。


「え? じゃあ、やっぱり?」


「そっ。

だから、唯香の意見も聞きたいと思って家に帰ってきたの」





 事件の依頼を受けて、転校をした日より、松下が用意してくれていたワンルームマンションに一人で住んでいた深青。


 仕事ということもあったが、それよりもここから学校に通うのは無理ということもあり、それで一人暮らしをしていたわけだが、この全く進展しない事件に頭を切り替えるためにも一度家に帰ってきたのだった。