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「すみません、深青さん…。
結局は、姉のつまらない呼び出しにつき合わせることになってしまって」
「いえ…。
友恵さんに会えてすごく楽しかったですよ」
「そうですか?
そう言ってもらえると助かります。
でも、まさか、すぐに来て欲しいと呼び出された用事が、このドレスを渡すためだけだったなんて………」
ハァ…と深く溜息を吐く真理亜を見て深青は微笑む。
「お茶目なお姉さんじゃないですか」
「えぇ…。
まあ、それは認めますが………」
「何か他に心配事でも?」
真理亜は寂しく微笑んだ後、先ほど友恵から受け取ったドレスを物憂げに見つめた。
「―――先ほども話していたと思うのですが、本当なら今回のパーティーの主役となるのは、姉のはずだったんです」
そういえば、そのようなことを話していたと深青も思い出す。
その時には複雑な事情があるのだと感じたのだが、それは当たっていたようだった。
「私は、阿部の姓を名乗ってはいますが、正当な後継者ではありません。母の連れ子でしかない私には血の繋がりももちろんありません」
「だけど、確か友恵さんは真理亜さんのお披露目と…」
「はい…。
今回のこのパーティーで私は、正式な阿部家の後継者としてお披露目されることになったんです」
「それは、おめでとうございます」