*
「大丈夫ですか? 如月さん?」
壁に凭れかかっている深青に心配そうに声をかける阿部。
実は深青はつい先日、やっとのこと、彼女のフルネームを知ることができた。
彼女の名前は阿部真理亜(あべまりあ)。
このカトリック系の学校にはぴったりの名前の彼女は、恐れ多くも日本でも有数の財閥家の一人娘。
まさしく、真のお嬢様であった。
「大丈夫です…」
力なく答える深青。
いつまでもこうしていられないと足を動かせば、足に強烈な電気が流れ、深青は目を閉じた。
「そのうちに慣れますから…」
「うぎゃっ!」
そう言いながら、軽く真理亜が深青の足に触れた瞬間、またも痺れが深青を襲った。
「す、すみません!」
痺れのために足の甲を触らずに、すねの部分を擦りながら、深青は必死にその痛みから耐えた。
「そうですよね?
触れたら痛いですよね?
私ったら、つい、そのことを忘れてしまっていて―――…」
「大丈夫です、阿部さん。
暫くの間、ジッとしていたら治りますから。
阿部さんは先に教室に戻っていてください」
「何を仰ってるんですか? 私も、残ります」
「でも―――…」