「お母さん、私に言ったからお姉ちゃんにも言ったと思い込んでたんじゃない?」





 手に取った茶菓子の袋を開け、口を開けながら唯香は暢気に言う。


 そんな唯香の言葉に、

「あら、そうだったかしら? 

そうかもしれないわね~…」

 なんて、暢気に深青たちの母であるさゆりは明後日のほうを見ながら呟く。


 そんな母に深青はがっくしと肩を落とした。


 しっかりしているようで、時たま一本抜けているようなヘマをする母に、深青は諦めにも似たような気持ちを浮かべた。





 気を取り直して、深青たちのやり取りを、にこにこした顔でジッと見ていた松下に「すみません」と謝りながら、深青は唯香の隣に座った。


「いやいや。

君たちが幸せそうでよかった…」





 目を細めて言う松下に深青たちは、寂しそうに微笑んだ。


「その節は大変お世話になりました」





 膝をつき、松下へと淹れていたお茶を差し出しながら、さゆりは礼を言う。


「いえ……。

私など、何のお力にもなれず…」


「そんなことはありません。

こうやって、ここで静かな生活を送れているのも松下さんのおかげです。

松下さんたちの力がなくては、今の生活を私たちができていたかと言われると、そうは思えませんから………」





 スッと目を伏せる母の姿を見ながら、深青もまた、そっと瞳を閉じた。