この靴がここにあるということは、誰か客が来ているということ。


 そもそも、父親がいない今の如月家に男性物の靴があること自体が不自然なことだった。


 家族ではない誰かが来ているということは明白だった。


 すると、普通に考えるとこの革靴を履いた人物を家にあげたのは、唯香ということになる。





 唯香の知り合い?


 でも、あんな高級そうな革靴を履いた知り合いなんて、あの子にいる?





 まだ、中学生である唯香にそんな知り合いがいるなんて、深青には到底思えなかった。





 訝しく思いながらも、リビングへと入っていくと―――…





 そこには、見慣れた人物の姿があった。


 目を見開いた深青は、その人物の名前を呼んだ。


「松下さん?」


「やぁ、深青ちゃん。久しぶりだね」





 少し恰幅のいい、優しそうな笑みを浮かべる男性がそこには居た。


 久しぶりと言われたとおり、深青が彼と会うのは、四年ぶりだった。


 父が亡くなってすぐ後に会った時以来だった。


「本当に、お久しぶりです……」