その時、それまで色っぽい眼差しで僕を見つめていたアンナが突然クスクスと笑いだした。

「……どうしたんですか?」

呆然としている僕を見てアンナの笑いは次第に大きくなり、それまでグラビア雑誌から抜き出てきたような清楚なアンナがまるで男のようにゲラゲラと大声で笑い出した。

訳が解らず呆然とその場に固まっている僕を前に、アンナは突然体を起こし、僕の腰の辺りを掴むと、一瞬で体を一転させ、僕とアンナは体制を入れ替えた。

気がつくとアンナが上になり、僕が下になった。

「お姉ちゃんが欲しかったって?笑わせるんじゃねぇよ。普通姉弟でこんな事するかよ……?何中学生みたいな事言ってんだ。ただ年上の女が欲しかっただけだろうが……あんまり甘い事言ってんじゃねぇよ」

アンナの口から飛び出したその言葉を聞いて僕はア然とした。

いや、言葉よりも声そのものが僕の心臓の鼓動を止めようとしていた。

アンナの口から発せられた声は紛れも無く兄 健一の声だった。


「……兄貴?」


「どうやら気付いたみたいだな……。そうだ。俺だよ……」

「……え〜」


深夜だという事も忘れ、僕は叫び声を上げてしまった。


アンナが兄貴……?


僕の頭はすでにパンク寸前に陥っていた。


【続く】