底の見えぬ禍はその爆発的な力量を僅かに抑え断続的に身を震わし続ける。
弱まったとはいえ、普段のそれより遥かに大きな力量。

うっ・・・うっ・・・
口から出るのは息も切れ切れの泣き声だけ。
見たくない・・・
見たくない・・・
目を開けるのが怖い。
町でもない、村でもない、元はその一端の小さな集落とはいえ、今では数百の命を育み、数百の家が軒を連ねる土地だ。
オエエェェ・・・
脳裏を駆け巡るのは、吐くはずのないこの体でありながら吐き気を覚える言葉にはできない惨状。
でも見なくては・・・
その無力ゆえ防ぐことはできなかった。
ここからだ、ここからが、私の役目だ・・・だから見なくては・・・
この極限に手を差し伸べることはできる。
恐る恐る目を開く。

「あ・・・あああ・・・」
涙が止まらない。
サクラの目に映ったもの。

「ばあちゃん、大丈夫か!?」
「そっちは大丈夫?」
「うちは、みんな無事!」
愛した我が子らが、互いの無事を確かめあい、互いを救い合い、極限に立ち向かう姿だった。
その姿はなんと雄々しく、なんと美しく。
目に見える景色に被害はあるものの、幸いにしてサクラが見守るこの地において、命の輝きは失われていなかった。