子供の頃ここで遊んでいると、いつも誰かに優しく頭を撫でられていた。
その優しい手のひらが好きだった。
手のひらの温かさに、心は癒され。
祠に向かい手を合わせる。

「ありがとうございます、サクラ様。なんか元気になれました。でもね、これきっとおみくじって言わないよ。おみくじってのはたくさんの中から自分で選んで、その中に書かれてあることで運勢を占うんだよ。よくはわからないけど、たぶんそんな感じ」
スカートを軽く叩き、恵子は立ち上がり、桜の木を見上げる。
「満開に咲くか、散るかはわからないけど、ガッコ行ってきます」
恵子は久しぶりに笑顔だった。

「うむ。良い笑顔じゃ」
立ち去る恵子を桜の木に寄りかかりサクラが見送っている。
桜の木を見上げる。
桜はまだまだ芽吹く気配はない。
「けどな、恵子。この時期に散る桜などあるか、アホウが。これから満開になるに決まっておろうに」
ケタケタとこの地を見守る神は笑っていた。

「しかし紙と神のお告げがあればおみくじと言うのではないのか・・・難しいものよのぉ」


おわり。