「サクラ様っ!」
その自分の叫び声に、跳ね起きた。
夢・・・
でも夢だとしても・・・
目覚まし時計は、いつもの起床時間より30分以上早い時間を表示している。
急いで制服に着替え、玄関を飛び出る。
「いってきます」
「ちょっと恵子、朝ご飯は!?」
「ガッコ帰ってきてから食べるー」
うん。人って慌ててると意味不明な言葉を叫ぶものなんだと改めて実感。
それだけ慌てて向かう場所。
ただの夢で勘違いかも知れない。

この地方には一つの言い伝えがある。
神が不在だったこの地に現れた一人の巫女の言い伝え。
一時の恩に報いるために自己を犠牲にし神に成り得た巫女の言い伝え。
それが、夢にでてきたサクラ様。
あんな綺麗な人だったんだ・・
ハァハァ・・・
サクラ様がいる高台はうちの隣とはいえ、グルリと回り込む形になっているから、その距離は300m以上。
息を切らし階段を駆け上がり、子供の頃よく遊んでいた高台で足を止めた。
大きな桜の木と、その桜の木の下には小さな祠と。
変わらぬ風景がそこにはあった。
巫女の名がつけられた桜の木の下にある祠に近づく。
古く小さな石造りの祠。
その祠に折りたたまれた小さな1枚の紙があった。
・・・本当におみくじ・・・?