「ううう。頭痛い・・・」
3月14日の早朝と呼ぶにはまだ早い深夜、恵子は一睡もできずにベットの中で張り裂けそうな胸を押さえていた。
苦悶の表情の原因はホワイトデー。
2月14日。中学2年生の恵子は、心をこめて作ったチョコとともに、生まれて初めての告白を決行していた。
生まれて初めて告白は、ドキドキとかワクワク、そういった高揚感は無く、無視されたらどうしよう、嫌な顔されたらどうしよう、1ヶ月間そういった悩みを常に恵子に与え続けていた。
そして今日、学校に行けばなんらかの答えが出る。
苦しい。ただ苦しい。
「神様、助けて・・・」
どこかに逃げだしたくて、恵子は毛布を被り世界から自分の姿を消した。

「何をそんなに悩んでおるのじゃ?」
「だ、誰・・・?」
恵子の前に、一人の女性がいる。
「なんじゃ、おまえは。今、私を呼んだであろうに。だいたいだ、隣に住んでいるというのにつれないのぉ」
鮮やかな白と赤の少し歪な巫女装束を着た女性は、拗ねた表情を見せた。
「隣ったって・・・うちの隣はただの高台だし・・・」
「その高台には誰が住んでおるのじゃ!?」
綺麗な、本当に綺麗な顔がささやかな怒りの表情を見せた。
・・・ええと、高台には大きな桜の木があって、その下に祠があって、そこには一つの言い伝えがあって。
「・・・サクラ、さま・・?」
その場所には、そう呼ばれる神様が住んでいるんだ。