足が崩れ落ちそうになった、そんなとき。 「なにやってんすか、おっさん」 誰かの声が聞こえて、スッと違和感が消えた。 「ひっ」 振り向くと、真っ黒の髪をした人が、痴漢をしていた人の手首をつかんで駅に降りようとしていた。 お礼しなくちゃ! そう思った私は、降りようと思っていた駅ではなかったけれど、その人につづいて電車を降りた。