「ああ、どこかで見たことがあると思ったらお前か……、以前果歩に詰め寄って罠に嵌めようとした奴は」
その瞬間陽生の声がひどく低いものに変わっていく。
まさか、今の会話を聞かれてた?
いつ?どこから?
その言葉に少なからず、陽生が私達の会話を聞いてこの状況を飲み込んでいることにすぐに理解できた。
「ずいぶんと舐めた真似してくれたな。まだ懲りてなかったのか。こんな風に果歩にちょっかいかけるとか。
ちょうどいい、そう言えばあの時の礼がまだだったな。どうせなら今ここでしっかりと果歩にしたことを償って貰おうか?」
その冷たく、地を這うような響きにビクリと全身に緊張がはしる。思わず鳥肌が立った。
「っ……!俺は別にちょっかいなんか……!ただ、一度果歩ちゃんにちゃんと謝ろうと思っただけで…っ」
「だったら何も車に連れてかなくても今ここでできるだろう?それをわざわざ送るだと?しらじらしい。魂胆が見え見えなんだよ!」
陽生の表情がさらに鋭さを増していく。
まずい、本気で怒ってる?
その怖さはさっきまで私に向けられていた優しさなんて微塵も感じられず、以前お父さんと対決した時とまるで同じものだ。
「どうなんだ?なんならこのまま出るとこ出て話そうか?これ以上果歩にちょっかいかけるなら俺もただじゃおかねぇ。それなりの覚悟はできてるんだろうな?」
より怖さが込み上げてくる。
案の定、そのセリフに宮川の表情が強張っていき、そして陽生の手を掴みながら苦しそうな顔を向けている。



