ハッピーエンドじゃ終われない【短編】



『トーマ』


『………嘘』


『嘘じゃない』


『だって主人公の恋人と
同じ名前…っ』


『愛してるよ、ミーナ』


最後に本のラストと全く同じ台詞を吐いて、くしゃっと私の髪を撫でた。


そして彼は去ってゆく。


まるであの本と同じように。


『……トーマ』


小さな私の呟きは私の中に溶け込んだ。


もう二度と、紡がないだろうと思っていたその名前を。