ハッピーエンドじゃ終われない【短編】



『ハッピーエンドが嫌いな私達はきっともう会えないわ』


真っ直ぐに彼を見つめる。


すると彼は目を伏せて、ゆっくりと触れていた手を下ろした。


『でも俺はまだこの物語を終わらせる気はないよ』


『え……?』


『いつかまた会いに行く。
極上のバッドエンドを用意して』


不敵な笑みを私に残して、
だから、と彼は言葉を区切った。


『俺の名前を覚えてて。
いつかまた会うその日まで』


私の耳元に唇を寄せ、彼は自分の名を囁いた。


その名前に目を見張る。