ハッピーエンドじゃ終われない【短編】



『そうね。
……だから、好きなのよ』


言った瞬間、遠くから閉館を促す司書の声が聞こえてきた。


二人でそちらを振り向いてから、
おもむろに彼は私を見つめた。


『……もう行かないと。
――そうだ、君の名は?』


『……ミーナ』


『本当に?』


『嘘じゃないわ』


『この本の主人公と同じだ』


軽く笑ってから、彼は名残惜しげに私の頬に触れた。


図らずも心臓が跳ねた。