「貴方だったのね……」 あれは閉館間近の図書館。 彼が落とした本を拾って差し出した、数年前のあの日。 『私もこの本読んだわ』 『本当?俺、この本好きなんだ。もう何度も借りてる』 『私も好き。特に――…』 「「ハッピーエンドじゃ終わらないところが」」 あの日と同じように 私たちは声を合わせた。 「ようやく思い出したか、 ミーナ」 そう言って彼はあの日のように屈託なく笑った。