涙が出てきそうだった。
声が詰まり詰まりになる。
この苦しくて辛い時間を過ごしている間に、そんな温かくて優しい目で私のことを見てくれてた人がいたなんて……。
ずっと拓がいない時間が寂しいと思っていたから…
それだけで、救われたような気持ちになった。
不意に、倉本くんが作り出した影が小さくなった。
気付くと倉本くんの顔が私の目の前にあった。
そう…、倉本くんはしゃがみ込んで、私の顔を真剣にのぞき込んでたんだ。
「俺だってそんなコト言われたら、マジで杉田のコト拓から奪いたくなったんだけど」
「…倉本くん?」
真剣な顔のまま、そんな言葉をつぶやかれると、どう対応していいのか分からない。
だって…、返事なんてできるわけないよ。
確かに一人の時間は辛い。
そんな時にあんな心揺さぶられる言葉を言われて、意識しないなんてできない。
だけど私と一緒にいる人は拓じゃないと意味がないわけで。
もう…
何も考えられないよ。
その時、突然教室のドアがガラガラと大きな音を立てて、思わず肩をビクリとさせてしまった。
次に音が響いた方向に目を向けると…
「おいっ!柚に近付くな!!それ以上近付いたら、いくらマサでも許さねーぞ!」
「え?拓……?」
どうして拓が、うちの教室に…?
しかも、学校に生徒がいない時間帯に……
拓はどうやら急いでここまで来たみたいで、顔は汗だく、息も全然整ってなかった。
どうしよう…。
もしかして今の会話、聞かれちゃってた…?

